鉄腕アトムとトルク
ロボットの関節について考えていると、
トルクという言葉がつきまといます。
トルク。まあ、語弊込みでざっくばらんに言えば、
軸回転するものがどれだけの重さに耐えられるか、という指標となるものです。
トルクレンチやトルクドライバーなどでおなじみで、
設定重量を超えた力がかかると、ものによってはギアがずれて
ガキガキと音がなります。
ギアモーターではギアが外れてすっぽぬけるか、
回らないのを回そうとして発熱しはじめるかするのでしょうか。
ロボットの足関節に使うギアで、たとえばトルクが2キロとあったら、
足や本体が2キロくらいあると、持ち上げることができません。
実際はてこの原理が働くので、軸から離れるにしたがって
耐加重は落ちていきます。
そんなトルクについて思いを馳せていたら、
ふと、鉄腕アトムを思い出しました。
10万馬力だったり100万馬力だったりするアトムですが、
手で大岩を持ち上げたり電車を持ち上げたりしていたように思います。
今まではなんてことなく考えていたものの、
トルクのことを意識してからは、なんでもなかった部分が気になりました。
たとえば1馬力が1キロを動かせる力だとして。
10万馬力では10万キロのものが動かせることになります。
ここで、10万馬力の機関車に10万キロのものを載せて動かせば、
荷物を載せて走れるのはわかると思います。
機関車部分をロケットに置き換えても、動くのはわかると思います。
さらに、ロケット部分をジェット噴射で飛ぶアトムの体に
置き換えても動くのはわかるでしょう。
直線運動であれば、ほぼ、『本体のパワー=動かせる重量』になるからです。
でも、それが腕なら。
わたしたちは、水の入った重いバケツを持つとき、どうやって持つでしょうか?
たぶん、腕を目いっぱい伸ばしたまま持つことはないと思います。
きっと、腕をなるべく体幹に近づけて持つことでしょう。
なぜなら、腕を伸ばせばその分てこの原理が働いて、
持ち上げるにはバケツ重量以上のパワー(=トルク)が必要になるからです。
というところでアトムを考えると、なんとなく今までは
10万馬力だから10万キロの物質をどの場所でも持ち上げられて
当然と思っていました。
でも実際は物質が軸部分から離れるにしたがって、
耐加重はどんどん下がっていきます。
10万キロの物質を持とうとすると、
すくなくとも10本の指の関節が1本ごとに1万馬力のトルクを持ち、
ひじ関節、肩関節それぞれ10万馬力のトルクを
持っていなければならなかったのです。
そう考えると、馬力があるからという理由で、
重いものを腕で振り回してしまうアトムの機構で一番すごいのは、
実は腕なんじゃないかと思うのです。
そして――特に腕がすごいと思っていたからこそ、
タイトルは『【鉄腕】アトム』になってたりして……とちょっと思いました。